破産申立時の従業員への給料支払いの適法性について

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借金 債務_アイコン近時、破産申立てが増えてきました。

 

先日、法人破産の相談を受けました(結局受任はしませんでしたが)。

 

その際、従業員への給料を支払うことが適法といえるか問題にあがりました。

 

従業員の給料は財団債権であり(破産法49条1項)、破産手続に先立って弁済するものです(破産法51条)。

 

しかし、財団不足のときには、債権額の割合により弁済するのであり(破産法52条1項)、給料を全額優先して支払うと、財団不足になったときには問題が生じえます。

 

この点、破産法の建前からすると、財団の維持は重要ですから、従業員の給料を支払って財団を減少させるのは財団を害する行為といえそうです。

 

しかし、実際の運用は、従業員への給料の支払いは大目に見てくれるように感じます。

 

私が過去申し立てたケースでも、従業員への給料を支払ったことは何も言われませんでした。

 

従業員の給料は生活を支えるもので、1日でも遅れると生活できなくなるおそれがありますから、その支払い自体に正当性が高いのだと思われます。

 

他の先生に聞いても、従業員の給料の支払いをして、残額20万円の財団にして破産を申立てても裁判所から問題視されない、とのアドバイスをもらったほどです。

 

こういうところでは、裁判所は法を杓子定規に捉えるのではなく、人の生活を大切にする運用をしているんだなと温かみを感じます。

 

(小倉)