精神障害者の退院請求

成年後見 福祉_アイコン

成年後見 福祉_アイコン先日、精神病院に入院させられている方から、退院したい、との依頼を受けました。

 

本件の依頼者は、公道で他人に暴力を振るってしまったため、警察に逮捕されたものの、精神障害の鑑定結果が出されたため、強制的に入院させられたのです。

 

こういう措置入院をさせるためには、自傷他害のおそれがある場合でなければ、措置入院は認められません(精神保健及び障害者福祉に関する法律29条1項)。

 

ただ、実際にこの依頼者に会ってみると、精神障害を疑うほどしっかりしていました。

勉学・勤労の意欲にもあふれていて、話し方も実にしっかりしている。

 

カッとすると、気持ちを抑えきれないところがある、という程度でした。

 

そこで、私は、この人の代理人として、東京都精神医療審査会に対し、退院請求書を書きました。

 

もちろん、これだけでは、退院が認められる可能性は少ない。

統計上、精神障害者の退院までの平均日数は、約1年であり、めったなことでは退院は認められません。

 

ただ、なんと、この依頼者は、私と会った日から、精神的にとても落ち着きだしたそうなのです。

病院のドクターの話では、その日からカッとなることもなく、穏やかな表情をして、気持ちが落ち着いたそうなのです。

 

私は、この依頼者と大した話はしていませんが、退院後にどんな勉強をしてどんな仕事につく、とか話した思い出があります。

そういう将来への展望によって、この人の気持ちが穏やかになったそうなのです。

 

そのため、病院側は、「自傷他害のおそれなし」、と判断し、退院を決定しました。

本来であれば、精神医療審査会の面接(精神保健及び障害者福祉に関する法律38条の5第4項)や審査会(同法38条の5)を行うところだったのですが、それを待たずして、退院することができました。

 

とてもレアケースだそうです。

 

弁護士が退院請求に関わることで、この人の役に立てたと思うと、意義深い思いを抱きます。

(小倉)