もう1年前になるのですが、平成22年の12月に、ある男性の危急時遺言を書き、併せて遺言執行者になったことがあります。
その人は、私より若い40代前半だったのですが、病気で死期を悟っていたのか、遺言を書きたい、と言ってきたのです。
本来なら、遺言は、じっくりと検討を重ね、公正証書にして作るものです。
しかし、そのときには、そんな時間的余裕はありませんでした。
当日病院に行って、ぶっつけで作りました。
病院のベッドの横で、私はその人と話をし、同じく立会ってくれた弁護士に手伝ってもらい、内容を整理して書き留め、遺言を作りました。
その人が平成22年12月31日にお亡くなりになりました。
今日でもう1年たつのか、と感慨深い思いです。
その後、遺言の執行は、困難を極めました。
その人の遺産に入ると思っていた財産が、予期に反して遺産から外れたり、相続すると思っていた扶養義務が相続の対象にならなかったり。
やはりぶっつけで作る遺言には、トラブルはつきものです。
けれど、そういうときこそ、法律に従って処理をするべきです。
結局は、誰からも文句はつけられませんでした。
こうして、無事、遺言の執行を完了しました。
先日、この人の墓前に、遺言執行の完了を報告してきました。
あのとき、病室で、「あとは任せろ。」と、バトンを受け取ってきたことを思い出します。
死が迫っている人が、他人にバトンを渡す気持ちを考えると、何とも胸が痛くなります。
私にとって、12月31日は、毎年こんなことを思い出す不思議な日になる気がします。
(小倉)