意思無能力の立証方法

成年後見 福祉_アイコン

成年後見 福祉_アイコン私は、第一東京弁護士会の成年後見委員会の委員ですが、同委員会の部会としては権利擁護部会に参加しています。

同部を会では、最近は障害者の権利擁護の方策について論義研究しています。

 

先日の2016年10月12日(水)には、成年後見委員会の重鎮でいらっしゃる弁護士佐藤米生先生に障害者問題の法律相談についてご講義いただきました。

 

その際、障害者などの意思無能力の立証の仕方について部会では議論が盛んになりました。

 

知的障害者や精神障害者に意思能力が欠如する場合には、取引社会の食い物にならないようにするため、成年後見をあらかじめ申立てておけば保護ができます。

しかし、あらかじめ成年後見を申立てておくケースは少ないようにも思えます。

そういうノーガードの状態で必要のない取引をさせられないようにするのはほぼ不可能です。

 

そうすると過去の取引を無効にするには、当時意思無能力だったことを立証するしかありません。

しかし、どうやって立証すればいいのか、悩みます。

 

1つには、問題が発覚した時点で成年後見を申立てておくのが有益かと思います。

事後の策ではありますが、成年後見審判を得るほど意思無能力であれば、遡った時点でも意思無能力だったと認められる可能性があります。

 

また、取引行為の内容が不合理だったことも意思無能力を推認させる事由になると思います。

当時の事情から必要の乏しい物を購入したとか、取引によるプラスとマイナスのバランスがおかしいとか、正常な判断が疑われるような事情があれば戦えると思います。

以前は裁判所も銀行や証券会社がそんなに悪いことをしないだろうという信頼感があったようにも思いますが、部会の委員の話を聞くと、現代では裁判所の見方も厳しくなったそうで、たとえ銀行などであっても疑ってかかる様相だそうです。

 

もちろんそれで足りるかはわからず総合的な立証を求められるでしょうが、判断能力が乏しく取引社会の食い物になりつつある人の保護のためにはそういう形で立証を試みていくのが今のところの策なのではないでしょうか。

 

(小倉)